「生きるぼくら」 原田マハ
いじめから、ひきこもりとなった二十四歳の麻生人生(あそうじんせい)。頼りだった母が突然いなくなった。残されていたのは、年賀状の束。その中に一枚だけ記憶にある名前があった。「もう一度会えますように。私の命が、あるうちに」マーサばあちゃんから? 人生は四年ぶりに外へ! 祖母のいる蓼科(たてしな)へ向かうと、予想を覆す状況が待っていた──。人の温もりにふれ、米づくりから、大きく人生が変わっていく。
いじめを受け、ひきこもりだった麻生人生。蓼科でひとりぐらしを続ける人生の祖母、中村真麻。対人恐怖症の中村つぼみ。田んぼから三人は前をむいて歩み始めた―。収穫のとき、それぞれの心に温もりが実る。山本周五郎賞作家が描く感動の成長小説。
「殺人の門」 東野圭吾
「倉持修を殺そう」と思ったのはいつからだろう。悪魔の如きあの男のせいで、私の人生はいつも狂わされてきた。そして数多くの人間が不幸になった。あいつだけは生かしておいてはならない。でも、私には殺すことができないのだ。殺人者になるために、私に欠けているものはいったい何なのだろうか?人が人を殺すという行為は如何なることか。直木賞作家が描く、「憎悪」と「殺意」の一大叙事詩。
殺人という物騒なワードがあり躊躇する方も多いと思います。
しかし、私がこの小説を気に入っている理由は、主人公の幼少期からおそらく20代後半までの過酷で悲惨な人生を繊細に描写しているところです。
不幸は親の離婚から始まり、親の失業による貧困、学校でのいじめ、職場での嫌がらせ等、数々の不幸に見舞われるが、それでも普通の幸せを手に入れようと必死で生きる姿が私は好きです。
「遭難フリーター」 岩淵弘樹
金がない、それだけでなんでこんなに苦しいのか。いつになれば楽になれるのか―。
六〇〇万円の借金を抱えた二三歳の俺は、埼玉のプリンター工場で派遣社員になった。きつくて虚しい単純労働、嘘とエロとギャンブルにまみれた同僚たち。
金と生きる意味を求めてさまよう若者のリアルを切り取った傑作ノンフィクション。
「二度はゆけぬ町の地図」 西村賢太
中卒で家を出て以来、住み処を転々とし、日当仕事で糊口を凌いでいた17歳の北町貫多に一条の光が射した。夢想の日々と決別し、正式に女性とつきあうことになったのだ。人並みの男女交際をなし得るため、労働意欲に火のついた貫多は、月払いの酒屋の仕事に就く。だが、やがて貫多は店主の好意に反し前借り、遅刻、無断欠勤におよび…。夢想と買淫、逆恨みと後悔の青春の日々を描く私小説集。